写真は現実を被写体としている。
どれほど抽象化した写真であれ、どこかに被写体としての現実の切れ端を含んでいる。
写真は現実の一部分を切り取って私たちの眼前に呈示し、私たちが普段は何気なく見過ごしている何事かに気づくように導く。
たとえそれが見慣れた光景であっても、移ろいゆく現実の中で、私たちは実は何も見ていないことに気づかされる。「手探りのキッス 日本の現代写真」より
ロンドン在住の写真家・
米田知子さんの作品に惹かれ、彼女の作品とそのストーリーに向き合っています。
「手探りのキッス 日本の現代写真」も、その一冊。
《Between visible and invisible》
米田知子さんの代表作『見えるものと見えないもののあいだ』
通称「眼鏡」シリーズ。
フロイト、ヘッセ、マーラー、トロツキー、ガンジー、谷崎潤一郎といった過去の偉人たちが実際かけていた眼鏡のレンズを通し、彼らにちなんだ文書や手紙を撮影した作品。
米田さんは撮る被写体を選ぶ時、綿密なリサーチをされるとのこと。
とくに「眼鏡」のシリーズは、文化遺産であることもあり撮影許可が下りにくく、何年にもわたって申請を続けられたそうです。作品に対する情熱が伝わってきます。
そこに刻まれた歴史や記憶。
「本当に大切なものは目には見えない」私の米田さんの作品への想い。
そして、作品を通して歴史と向き合う旅は、まだまだ続きます。