先週末、銀座にある
INAXギャラリーに行ってきました。
『チェコのキュビズム建築とデザイン 1911-1925 -ホホル、ゴチャール、ヤナーク- 展 』はその日が最終日でした。
ギャラリーの入り口は、細かなタイルを使用し、美しい曲線で不思議な空間が造られています。
ピカソ、ブラックが中心となって起こった20世紀初めの美術運動キュビズム。
プラハを中心とした各地に斬新で奇抜なキュビズム建築が誕生したのです。
キュビスム芸術が、建築や工芸の分野にまで及んだ唯一の国、それがチェコ。
何とも言えない鋭角的な幾何学パターンの数々。
それらが、建築に光と影で立体感を浮かび上がらせています。
今回の展示は、当時の近代合理主義に反発を覚えた30歳前後の若き建築家たちヨゼフ・ホホル、ヨゼフ・ゴチャール、パヴェル・ヤナークの3名による建築を中心に、歴史上の希少な遺産が紹介されています。
2Fの会場は、ヨゼフ・ホホル、ヨゼフ・ゴチャール、パヴェル・ヤナーク、家具・工芸品のキュビズムの4つのコーナーで構成されていました。
キュビズム建築運動を先導した若き建築家でその中核的存在であった3人の作品はそれぞれが個性的です。
ヤナーク(1882-1956)は、キュビズム建築を理論的に牽引しながら、建築への表現を試みました。
初期の作品「ペルフジモフの家」などあります。
ゴチャール(1880-1945)は、最も多くの作品を残しました。
プラハ旧市街中心部にある「ブラック・マドンナ」や郊外の「バウエル邸」などが代表作です。
ホホル(1880-1956)は、新しい造形表現を建築に展開しました。
プラハのヴィシェフラト地区に建てられた「ネクラノヴァ通りの集合住宅」「コヴァジョヴィチ邸」など、ダイナミックな作品が代表作です。
キュビズム建築家たちは、室内に置かれる家具や照明器具、陶磁器などのデザインも数多く手がけました。それらは、建築以上にキュビズム的要素が大胆に表現されています。
余談ですが、映画『プラハ!』でも、キュビズムの要素をちゃんと取り入れていたのが印象的です。
10年以上にわたり、ホホル、ゴチャール、ヤナークの3人の作品をキュビズム建築を撮り続けてきた写真家・鈴木豊氏。
この展覧会では、鈴木氏がチェコの街並に溶け込んだ、光と影が揺れ動く豊かな建物の表情を細かな部分まで紹介してくださいました。
今回の会場、『INAX:GINZA(イナックス・ギンザ』は2008年11月にディスプレイ産業大賞とディスプレイ奨励賞をダブル受賞しています。
建物の隣には、建築・インテリア・デザイン分野を中心に集めている書店『INAX BOOK GALLERY』があります。興味深い書籍が揃っていて、時間が経つのを忘れてしまう空間です。