扇風機の風、遠くで聞こえる盆踊りの歌、蝉の声・・・そして夏の匂い。
この季節になると必ず観たくなる作品の一つ『異人たちとの夏』(1988)
あの懐かしい映像が忘れられないのです・・・。
中年のシナリオ・ライターが、幼い頃死んだはずの両親と再会する不思議な体験を描いた作品。
(第一回山本周五郎賞を受賞した山田太一の小説を、市川森一の脚色で大林宣彦が演出した異色作)
風間杜夫さん演じるシナリオ・ライターの原田英雄は妻子と別れ、マンションに一人孤独な毎日を送っていました。
ある日、原田は幼い頃に住んでいた浅草に出かけ、偶然、死んだはずの両親に会ってしまうのです。
落語を聞こうと立ち寄った寄席で、一人の客の後ろ姿が気になる原田。
そっと席を移動して横顔を確認してみると・・・なんと父親ではありませんか!
それも、記憶にある若い姿で。
そうそう、このシーン!
原田は、懐かしさのあまり、たびたび浅草の両親の家へ通うようになるのです。
同時に同じマンションに住む女性・桂(名取裕子さん)と愛し合うようになっていくのですが、両親との邂逅を繰り返すたび、原田の身体はなぜか衰弱していくのです。
実は、桂も異人(幽霊)だったのです・・・。
亡き父、母との再びの別れのシーンは涙が止まりませんでした。
ちゃきちゃきの江戸っ子、父親役の片岡鶴太郎さんも存在感がありました。
また、秋吉久美子さんの母親役も懐かしいお母さんをしっかり演じられていました。
彼女の独特の雰囲気も最高ですね。
レトロさ漂う浅草の街の雰囲気も郷愁を感じます。
この映画を思い出す時、自分の子供の頃の記憶が懐かしくよみがえってくるのです。
本当に寂しくなった時、一番会いたくなる人って誰なんだろう・・・?
大事なことを思い出させてくれる作品の一つです。